五線譜2

Recommend Tracks/Black Contemporary.Funk5

Randy Crawford/『Now We May Begin』

 『たまらなくアーベイン』では79年の『Raw Silk』が、数年前のA誌のブラックAOR特集では、82年の『Windsong』が、そして『AOR Light Mellow』では81年の『Secret Combination』が取り上げられたりと、コンテンポラリー物を語る時には絶対に不可欠のヒト。80年作の当該作もかなりの出来。前年に彼女がヴォーカルを取った、<Street Life>が革命的大ヒットを記録したので、その恩返しの意味があるのかは分からないが、プロデュースにはCrusadersの3人が名を連ねている。全編を通して爽やかな風が吹いているが、白眉は<One Day I'll Fly Away>。メロディ、サウンド・メイキング等、全てが完璧。何千、何万と聴いても色褪せる事を知らない、彼女の全ての楽曲の最高峰。同路線のタイトル・ソングや、アコギがいいアクセントとなっている<Last Night At Danceland>も推薦したい。
 ちなみにJoe Sampleは、全曲のコンポーズを担当している。
Randy Crawford/『Windsong』

 で、ブラックAOR特集で取り上げられていたこのアルバムも、再びここでクローズ・アップする。こちらの方がクリスタル/アーベイン度が徹底しており、ガイド・ブック掲載作『Secret〜』よりもAOR的な色彩が断然濃厚だ。Bill LaBountyの名曲<This Night Won't Last Forever>を、そして当時注目の的であった4th(邦題は『サンシャイン・メモリー』)より<Look Who's Lonely Now>を取り上げているが、推薦したいのは他の楽曲の方。Patti Austinの<Do You Love Me?>を少しメロウに仕立て直した<Letter Of Tears>、Graydon/Fosterへの意識を垣間見る事が出来るバラードの<One Hello>。イントロの甘美なムードでいきなりノック・アウトされてしまう、必殺ミディアム・フロウのタイトル・ソング。80年代黄金期の日本のシティ・ポップスを彷彿とさせる、<When I'm Gone>と<I Don't Lose Him>等々、全て出来は極上だ。
 83年の『Nightline』も同路線でAOR3部作のトリを飾るに相応しい内容だが、あのWomack And Womackが制作に絡んでいる為、他の2枚と比較するとややソウル的なテイストが強い。
L.A.Boppers/『Bop Time!』

 Side Effectのバックを努めた事で知られるグループ。The Boppers名義で1枚発表。80年にL.A.Boppersと改名して1枚。81年の本作は3枚目となる。ここで展開されるのはSide...同様、非常に都会的でお洒落純度が高いメロウ指向のファンク。聴き所は<LaLa Means I Love You>。The Delfonicsがオリジナルで、あの山下達郎もカヴァーしたフィリーソウル(フリーソウルでわない...爆)のスタンダード・ナンバー。アップ・テンポのダンサブルな解釈が成されているが、原曲の質感はそのままに新しい空気を取り入れているので軽快で実に心地よい。女性ヴォーカルとGeorge Benson風のギターがいいアクセントになっているメロウな<You 're On My Mind>、同曲のビートを強調し、フロウ感覚を引き立たせた<Where Did You Go>あたりの出来がいい感じだ。
O.C.Smith/『Together』

 ソウルと言うよりはポピュラー・ヴォーカルの範疇で語られて来たヒト。77年発表のこのアルバムは隠れたメロウ・グルーヴの傑作。その仕掛け人はTom Scott & L.A.Expressの面々。Jay Graydon、David Fosterご両人も参加しており、サウンドの彩りに一花添えている。ライト・メロウ・ファンならば聞き逃せない<Just Couldn't Help Myself>は、Marvin Gayeの<What's Going On>を、AOR風味にしたと言っても良い位の高揚感に感動ひとしきりだ。ミディアム・フロウのタイトル・ソングや<You And I>、フュージョンの隠し味が利いている<Come With Me>あたりの出来がいい。全体を覆うストリングスの陰影に富んだアレンジも、作品の完成度を際立たせるのに一役も二役も買っている。

 
Blue Magic/『Messege From The Magic』

 70年代ソウル・コーラス栄華時代を語るには欠かせない名グループ。代表作はやはり1stだが、77年に発表された通算5作目に当たる本作では、プロデュースにSkip Scarboroughを迎え、アップ&ミディアムに新境地を魅せている。バックにPhilip Bailey、Al McCay、Ralph Johnson等EW&Fのメンバーも参加している為か、<If You Want Me To>や<Four Leaf Clover>、<I Waited>あたりで彼らの『Spirit』、『All'n All』で聴かれたサウンド・カラーと、寸分変わらぬテイストを感じ取る事が出来る。特に<I...>はアルバム中ベスト・カットと言える程に秀逸なミディアム・フロウだ。またEW&Fっぽさに従来のフィラデルフィア・サウンドをブレンドした、<Can't Get You Off My Mind>の出来映えも圧倒的。今まで(と言うか今でも全然...)話題に上らないのが不思議な程の1枚だ。
Superior Movement/『The Key To Your Heart』

 そのBlue Magicを小型(と言っても人数は同じだが)にした感のグループ。アルバムは82年に出されたこの1枚のみ。ガイドブックで全く取り上げられないので(ちょいリードVOが非力なのが要因?)、話題になる事は皆無だが、80年代メロウ・ブラコンを支持している方ならば、渋いスウィート・ソウルの誉れ高き名盤群よりは、断然こちらを推薦する。<Guilty>は勿論Barbra Streisand & Barry Gibbで有名なあの曲(90年代にAcid Jazzのカヴァーでヒットしたけど、誰が演っていたか忘れた...)。彼らのヴァージョンも80's Groove的な甘酸っぱい雰囲気が漂う逸品だ。あとタイトル・ソングも都会の夜系のムーディーなナンバーで、個人的にはベスト・カットだ。EW&Fで有名なTom Tom 84がアレンジに絡んでいるため、アップの出来もソリッドで良い。
Paul Jabara/『Keeping Time』

 Donna Summerの<Last Dance>や、<No More Tears>の作者として知られているヒト。ディスコ映画『Thank God It's Friday』にも絡んでいる事実から想像出来るように、彼のサウンドとディスコは密接な関係にある。このアルバムも嘆かわしい程のデ・ス・コが殆どだが、意外と心地よい感触も持ち合わせている。Jay Graydon、David Foster、Steve Lukather、David Hungate等、注目のミュージシャンも多数参加。前述の映画に使われたオールディーズ風の<Trapped In A Stairway>や、Donnaの曲をミディアム・フロウに仕立て直した<Last Dance>、JayのギターとDavidのエレピが最良のムードを醸し出している、バラードの<Something's Missing>等、素通りできぬ楽曲多し。
 翌79年の『The Third Album』はディスコ色が更に強調された悲惨な作品だが、最後に収録されたムーディなミディアム・フロウ、<Just You And Me>の出来は圧倒的に素晴らしい。
Brass Contruction/『III』

 75年に<Movin'>のヒットでデビューした大型ファンク・バンド。彼らのサウンドは泥臭さを払拭し、ディスコと微妙な接点を保ちながら、常に都会的アプローチを試みているのが特徴である。77年に出たこの作品から洗練度は飛躍的に高まる。収録曲は殆どアップだが、1曲ミディアム・フロウが生まれている。その<Wake Up>は3年ほど流行の先を読んでいた様な、マリン度とシティ度が同次元で消化を果たした粋なナンバーだ。
 82年からリーダーのRandy Mullerが主導権を握るが、更に研ぎ澄まされて魅力が倍増したファンク・ナンバーとは打って変わり、メロウ度は後退する結果に...。
Bonnie Pointer/『same』

 このコーナーでも2枚取り上げているPointer Sistersのオリジナル・メンバー。彼女は78年に独立して同年にこのアルバムを発表。サウンドのディスコ化を推進していた当時のモータウンからのリリースであったが、内容は同レーベルの全盛期を彷彿とさせる軽快なポップ・ナンバーが大半。ソウル・チャートでヒットした<Free Me>は、ゆったりとしたリズムに情熱的なヴォーカルが絡む逸品。もう1曲のヒットである<Heaven Must Sent You>は、60年代のSupremesがやりそうな、ポップ純度に満ち溢れたナンバー。ちなみにこの曲のシングル・ヴァージョンは、何故か明るいディスコ・ナンバーに激変している。
Rena Scott/『Come On Inside』

 80年代初頭に注目を集めたJames MtumeとReggie Lucasのプロデュース・ワーク。代表的なのはStephanie Millsの一連の作品や、Phyllis Hymanの『You Know How To Love Me』等が挙げられるが、この作品もややマイナーな存在ながら、彼らを語るには忘れてはならない1枚である。<We Can Make It Better>に於ける洗練を極めたアップ、説得力のあるバラードの<If I Had A Chance>、心地よさを満載したミディアム・フロウの<The Grass Ain't Greener>等々、収録曲はどれも粒ぞろいだ。
 彼女は88年に『Love Zone』が出ており、ガイドブックでは結構好意的なレビューが書かれているが、私個人の好みの拠り所では、やはりこちらに軍配が上がる。

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