Freeman's Index On The Web (4)

Gypsyといふバンド

 たった1曲の横恋慕が大袈裟な感情に発展し、遂には収録アルバムのみならず、前身バンドの全アイテムまで購入に至った、最近では稀なくらいに入れ込んだグループが今回の主役である。
 その名はGypsy。『Free Soul Avenue』に収録された、James Walsh Gypsy Bandの<Cuz It's You Girl>に惚れてしまい、彼らの全てを知り尽くしたい欲求にかられ、前身バンドにまで興味が及んだ訳である。
 但しGypsyは同名異グループがイギリスにも存在するので、American Gypsyとも呼ばれている。しかも<Golden Ring>のFree Soul大ヒットを持つ、あのAmerican Gypsyとは別グループなのだ。混乱しそうだが、本家Gypsyはここに挙げるアルバムを揃えていれば、大丈夫の筈である。
『Gypsy』

 1970年にRCA傘下のMetromediaから発売された1st。これが何とChicago同様2枚組なのだ(CDでは1枚)。そしてそのサウンドはFull MoonがCountryをやったような、もしくはEaglesやCCRがJazz Funkをやったような、何とも形容のし難いことをやっているのだ。しかし楽曲の完成度は抜群!幻想的なメロディとGino Vannelli顔負けのインプロヴィゼイションを随所に盛り込ませた演奏。更には心地よい空気の演出。これらが一体となった事により醸し出される独特の空間は、聴き手の精神的領域に踏み込む程の完成度を誇っている。<Gypsy Queen>は日本のヒットチャート番組にも顔を出していた位なので、かなり評判だったのであろう。
Free Soul教科書『Suburban』では、同曲のPart2と<Here Is My Loneliness>が推薦されていたが、個人的にはそれ以外の、ドラマティックな展開の楽曲を強く推したい。
『In The Garden』

 幾分楽曲がスッキリとコンパクトにまとまった感がある。しかし手作り的な柔らかさと、鉄壁のサウンドを同居させたその個性に何ら変化はない。Santanaか?と思わせる白熱の<Around You>にまず悶絶。お約束のドラマティック路線は<As Far As You Can See(As Much As You Can Feel)>と、<Here( In The Garden)>で。特に後者はPart1、2に分かれており、お約束の長尺ドラム・ソロまで飛び出す。ただ全体的に衝撃のデビュー作と比べて、少し物足りなさを感じるのも事実。
『Antithesis』

 このアルバムから、親会社のRCAからのリリースとなる。前作で試みたポップ化が、ここで更に強調される。その反面スリリングな妙味が一歩二歩後退。更にギターが前面に出てきて、ハード・ロック的な色彩も強くなり、個性の欠如は免れない事実となる。インプロヴィゼイションも姿を消してしまい、明らかにヒット狙いの路線に走っている。但し曲によってバラつきが激しいものの、光る曲は聴き所満載だ。魅惑のメロディはタイトル・ソングと、<Day After Day>、<Facing Times>で徹底的に堪能出来る。あと<Don't Bother Me>の緩やかな感覚は、あたかも<Gypsy Queen(Part2)>の頃に戻った錯覚に陥る程だ。
『Unlock The Gates』

 このアルバムは、音楽性に於いては殆ど別バンドと言っても良いだろう。Chicagoのホーン隊を迎えてR&B/ソウル的な指向性が展開されているが、楽曲の魅力は今イチ。あの燦然と輝きを放っていた個性的なGypsy Soundは、<Bad Whore(The Machine)><Don't Get Mad(Get Even)>あたりで僅かに聴けるだけ。あとは注目に値する点はナシ。決して悪いアルバムではないのだが、個性と楽曲の完成度が売りのGypsyだからこそ、辛い点を付けなくてはならないのだ。
 この後彼らは、お約束(?)の自然消滅の道を歩む。
『James Walsh Gypsy Band』

 解散したGypsyだが、その4年後にメンバーだったJames Walshは自らバンマスとなり、新たな指向性のバンドを旗揚げする。アルバムはGypsy同様RCAからのリリース。注目はその内容。AORと呼ぶにはまだ垢抜けていないが、全編通してアダルト&メロディアス。中期Chicagoの作品群を連想していただければ、絶対にハズさない。<Gray Tears〜My Star〜Whole Lotta Givin'To Do>は、組曲形式で展開する所は初期Gypsyを彷彿とさせるが、ブラス・セクションをふんだんに加えた所は、明らかに新しい発想。<Cuz〜>は勿論ベスト・カットだが、バラードの<Love Is For The The Best In Us>、<Lookin'Up I See>も聴き逃せない。特に後者はChicagoの<No Tell Lover>、そのものと言っても過言ではない名曲だ。
Free Soulブーム、そしてファンキー・ロックの隆盛がなければ、Gypsyという秀逸なバンドとの出会いは無かったであろう。ブームの副産物と呼ぶには、あまりに深遠で魅力的。彼らの他にも同じ境遇のアーティストは、決して少なくない筈だ。そんな連中にもこれからスポットを当てて行きたいと思う

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