Freeman's Index On The Web (7)

● George Duke(1977〜1987)

ブラコンを追っている人間ならば、必ず一度は通るプロデューサー、George Duke。Frank Zappaの所でKeyの腕を磨き、70年代にはアバンギャルドな一面を持ちながらも、ブラジル音楽にも深く根ざしたソロを発表。80年代には珠玉の名盤を連発するかたわら、ブラコン系プロデューサーとして、破竹の勢いの活躍ぶりを魅せる。90年代に入ってからはスムース・ジャズに流れに便乗し、自らの地位を確固たるものにしている。
今回はそんな彼の長いキャリアの中から、一番ここのHPらしい時期(爆)である10年間にスポットを当ててみたいと思う。
『From Me To You』

 『決意』の邦題で出されたEpic移籍第1弾。しかし<You And Me>にポップの片鱗が見られるものの、あとは一般性完全無視。彼が以前在籍していたMPS時代同様、ここで取り上げられている楽曲はマニアックで親しみに欠けている。故に売れる筈もなく、次作から徐々に方向性を変え始める。
『Reach For It』

 マニアック一直線だった前作から、徐々にサウンドが変貌していく。その1つがタイトル・ソング。ここで試みたのは、当時飛ぶ鳥を落とす勢いを誇っていたP-Funkのエッセンスの導入。それが功を奏したのか、彼にとって最初のスマッシュ・ヒットを記録する。他には持ち前のメロディを全開させたバラードの<Just For You>、今後のポップ路線を垣間見る事が出来る<Searchin'My Mind>、ラテン色を大幅に取り入れ、スリリングな展開を魅せる<Hot Wire>が良い出来だ。他は相変わらずマニアックなのだが、それらも若干洗練を兼ね備えたモノとなっている。
『Don't Let Go』

 ヒットが出たのが要因なのか?前作まで存在していたマニアック度は薄れ、ポップに開花したメロディを前面に押し出し、本格的にヒットを狙って来た。その成果もあってか、P-Funk路線第2弾と言える<Dukey Stick>は、ソウル・チャートでTop10入り。他ではSheila EのPercが炸裂する<We Give Our Love>や、スキャットとポップなメロディを掛け合わせた<Year,We Going>あたりが聴き所。またミディアムの<Starting Again>や、女性VOによるバラードの<The Way I Feel>も秀逸。
 尚蛇足ながら、私が彼を初めて知ったのはこのアルバムから。何と中3の事(早熟!)。もっとも購入したのは、それから5年以上も後の事だが...。
『Follow The Rainbow』

 前作の路線を踏襲したばかりでなく、Mellow Grooveの要素を大幅に取り込み、来る80年代に向けて臨戦態勢を整えた1枚。全体の統一感も抜群。勿論楽曲は全て問答無用の完成度を誇っており、勢いのある<Party Down>や<Funkin'For A Thrill>、<I Am For Real>あたりはダンサブルでありながらポップ色濃厚。ミディアム・フロウの名曲<Say That You Will>と<Straight From The Heart>、バラードの<Sunrise>、ブラジル色を前面に押し出した<Festival>、メロウでどこか幻想的な<Corine>等々、聴き所を挙げればキリなし!個人的には彼の全作品の中で1、2を争うほどの最愛聴盤である。
『Master Of The Game』

 ポップに徹した前作に比べると、ややマニアック的な感覚が戻って来た雰囲気がある。組曲構成の<The Alien>の印象の強さが要因か?しかしそれ以外は納得のナンバーが揃っており、またもやShiela EのPercが爆裂するダンサブル・アタックの<Look What You Find>や、ミディアム・フロウの<Every Little Step I Take>が推薦。女性VOが心地よい聴後感を与える<I Want You For Myself>と、彼自身のリードVOによる<I Love You More>では、後の<Shine On>への布石と言える展開が随所で聴かれる。
 ちなみにこの作品は何故か日本未発表。前作同様クレジットが1979年なので、一年に2枚の作品を発表した事になる。いかにこの時期の彼の創作意欲が漲っていた証拠だ。
『Brazillian Love Affair』

 90年代に入ってからの著しい再評価により、すっかり名盤の仲間入りを果たした1枚。個人的にもこのアルバムをキッカケに、ブラジル物に対する先入観を崩壊させ、1歩前へ踏み出すことが出来た思い出深い1枚。初期ならばマニアックに徹する所だろうが、ここではポップスとしても通用する聴き易さを兼ね備えており、初心者でも十分に楽しめる内容だ。スリリングな展開を魅せるタイトル・ソングは勿論の事、ヒーリング的とさえ言える程に美しさに満ち溢れた<Summer Breezin'>や<Love Reborn>の出来が素晴らしい。ブラジルへの愛情は、Simoneを迎えた<I Need You Now>(『Free Soul Lovers』にも収録された)や、Flora Purimのスキャットを交えた<Brazilian Sugar>等で堪能出来る。
 ちなみに79年に制作されていたらしいのだが、発表されたのは半年以上経ってからとの事。『Master〜』と、どちらが先なのかは後追いだったので良く分からない。
『Dream On』

 Stanley Clarkとの『Clark/Duke Project』(後述)を日米で大ヒットさせ、勢いに乗り始めていた82年に出された、彼の名刺代わりと言える代表作。<Shine On>に当時ミラーボウルの下で身を委ねた方も多いであろう。今でもダンス・クラシックとして人気が高い。アルバムも『Don't〜』から始まったポップ改革が理想的な形で結実した、絶賛に値する完成度だ。<Shine〜>に陰影を加えた様な<Ride On Love>や、ミディアム・バラードの<You><Let Your Love Shine>等々、全てが問答無用に素晴らしい。
 面白いのは<Son Of Reach For It>。タイトルから想像できる通り、初ヒット<Reach For It>の改築ヴァージョンである。また1976年の『I Love The Blues,She Heard My Cry』に収録されていた、<Someday>(オリジナルは今やクラブ・クラシック)も再演されている。
『The 1976 Solo Keyboard Album』

 そのタイトル通り、1976年にレコーディングされているが、実は発売になったのは1982年になっての事。彼のオフィシャル・サイトによると、実はMPSで録音されていたらしい。しかし出たのはEpicから。この辺の権利関係が良く分からない(訴訟も絡んでいるようだ)。内容は当時レンタルで借りて聴いただけだが、ポップのポの字も無いような音で落胆した記憶がある。
『Guardian Of The Light』

 彼の全作品の中でも異色中の異色と言える、物語仕立ての一大コンセプト・アルバム。但し内容はかなり難解で、通常の善悪の戦いでは済まされない、奥の深さが存在する。楽曲は前作の路線を踏襲しつつも、よりドラマティックかつ陰影に富んだ領域に踏み込んでいる。<Shine〜>Part2と言ったニュアンスの<Reach Out>、メロディアスなミディアム・フロウの<Give Me Your Love>、女性コーラスの効果が美麗な雰囲気を奏でる、バラードの<Born To Love You>あたりがオススメ。また一時期<You>に於ける幻想と瞑想が入り交じった様な、奇妙な魅力の虜になってしまい、この曲ばかり繰り返し聴き狂った覚えがある。
『Greatest Hits』

 イギリスと日本だけでリリースされたベスト・アルバム。無難な曲で構成されているが、『Guardian〜』に収録されていた<Celebrate>にヴォーカルが加わっている(オリジナルはインスト)。
 ちなみにアメリカ(日本も)では96年にCDとしてリリースされているが、前述の曲はセレクトされておらず、全く新しい選曲(一部ダブってはいるが)が成されており、ジャケットも大きく異なる(右記)。
『Rendezvous』

 ヒットが出なかったので印象としては地味だが、実はポップ・アルバムとしては、『Dream On』と肩を並べる程に素晴らしい出来映えを誇る作品だ。どの曲も聴きやすく、一度耳にしたら覚えてしまいそうなメロディに満ち溢れている。どの曲も素晴らしいが、彼ならではのメロディ展開を魅せる<Got To Get Back To Love>と、明るさに満ち溢れているミディアム・フロウの<Take It On>の2曲が白眉。バラードの<Stay Awhile>、インストの<Thinking Of You>なども、当時何度となく繰り返し聴いていた逸品だ。
『Thief In The Night』

 長年在籍したEpicを離れ、Elektraに移籍しての第1弾。前作から何と半年もしないインターヴァルで発表されている。腐った曲もあるが、アルバムの完成度は前作同様非常に高い。極上のメロディを聴かせる<Rememering The Sixties>は長年のフェイバリット。他にはポップで跳ねている<I Surrender>や少しロック風味を加味した<Ride>、手慣れた路線のタイトル・ソング、ミディアム・フロウの逸品<Love Mission>等が推薦。全体を通して親しみやすさに満ち溢れている。
『George Duke』

 売れる売れないは別にして、内容的には珠玉の名盤を連発した80年代。しかしその伝説もこのアルバムでピリオドを打ってしまう。80年代後半のエレクトリック・ファンクに対応したつもりなのだろうが。単調な打ち込みリズムばかり耳に付いてしまう。しかも曲が良くない!。前作までの完成度高きサウンド・メイキングは何処へ行ってしまったのか?。バラードの<Good Friend><The Morninig,You & Love>が、従来通りのクオリティを持ち合わせているだけに残念である。
その後の『Night After Night』は単なる凡作。90年代に入ってからの『Snapshot』『Illusions』は、時代のニーズに応えたようなコンテンポラリー・サウンドを展開し、去っていたファンを呼び戻す事に成功している。それ以降は異色作『Muir Woods Suite』、従来の路線に戻って『Is Love Enough?』『After Hours』を発表し、安定した活動を続けている。

●Clark/Duke Project

『The Clark/Duke Projest』

 お互いのアルバムに参加し合い、友情を深めたStanley Clarkとの初めてのコラボレイション。凄腕同士なので、当初は超絶技巧でマニアックなアルバムか?との予想もあったが、実際に届けられた音はポップでお洒落に決めたブラコンだったので、多くのファンを驚かせた。AORバラードとしても知られている<Sweet Baby>は、何とポップ・チャートで大ブレイク。あの『ベスト・ヒットUSA』でもプロモ・ビデオが流れた位なのだ。他にも勢いのあるインストの<Wild Dog>や、スマートかつダンサブルな<I Just Want To Love You>、幻想性に富んだ<Never Judge A Cover By It's Book>、これまた名バラードの<Touch And Go>等、どの曲も問答無用の名曲揃い。21世紀に伝えるべき圧倒的名盤だ。
『The Clark/Duke Projest II』

 82年にGeorgeは『Dream On』、Stanleyは『Let Me Know You』という最高の作品をリリースし、人気も実力も絶頂期を迎えた。そして翌年に待望の第2弾が実現する。プレスミスか?と驚くこと受け合いのドライヴィング・ロック仕立ての<Put It On The Line>、これまたアップ・テンポでグイグイ押しまくる<Heroes>の2連発には悶絶なのだが、他の楽曲は残念ながら前作に遠く及ばず。<Try Me Baby>や<Great Danes>なんかは露骨な二番煎じ狙いで、正直言って聴いているのが辛い。それならばKashifあたりを意識した、<The Good Times>の方が好感触だ。
『The Clark/Duke Projest 3』

 90年発表なので本当は反則なのだが、かなり聴き所の多い内容なのでレビューとして取り上げる。たたみかけるアップの<Oh Oh>や<No Place To Hide>は、リズムこそ打ち込みだが、勢いのあるサウンドは、あたかも1stの頃に立ち戻った感がある。<Sweet〜>路線のバラード<Lady>も良いが、Gerald Alstonをヴォーカルに迎えた<Right By My Side>の方が出来は極上。
 面白いのは、Parliamentの名曲<Mothership Connection>を、当時本家P-Funk軍団を離脱したばかりの、Dennis Chambersを迎えてカヴァーしている点。出来はオリジナルに到底叶わないものの、ドラムは実はこちらの方が凄かったりする(^^;;;)。
ちなみに彼は80年頃からプロデュース業を開始。Jeffrey Osborneの名作3枚を始め、Deniece Williams、Phillip Bailey、Al Jarreau、Sieter Sledge、Angela Bofill、Howard Hewett等々、その枚数は列挙に暇がない。機会があればそれらのアルバムにもスポットを当てたいと思う。

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五線譜1

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