Freeman's Index On The Web (1)

● Faragher Brothersの轍

急激な早さで増殖するレコード&CD。皆様はいかなる理由で買い続けているのであろうか?「今買っておかねば」という一種の脅迫概念、ネタだから、CCMだから、(俺わこんなの持っているゾ!と自慢したいから.....そんな奴わ打ち首獄門ぢゃ!...爆)色々とあると思うが、好きなミュージシャンが参加しているから、という事由が殆どを占めているのではなかろうか。
 今回のFaragher Brothersは中田利樹氏の「Jay Graydonのギターがタップリ楽しめます」の一言でいきなりメジャーになったグループである。しかしバンドとしても非常に魅力的で、Jayのネタだけで語られるには余りに惜しい存在だ。そこで今回はアルバム紹介を通じて、彼ら自身の全貌に迫ってみたいと思う。
『Faragher Brothers』

1stはABCより76年にリリース。デビュー作でいきなりの超傑作である。幾分当時のChicagoやTower Of Powerの影響は隠せないものの、R&Bへの憧憬をストレートに表現(Curtis MayfieldのImpressions時代のカヴァーも収録)する一方で、ボサノヴァなどの要素を巧みに消化した独自の都会派サウンドを構築する有り様は、Free Soulと呼ぶに相応しいものであろう。収録曲はどれも魔性に満ちており、オープニングの<The Best Years Of My Life>(Jackson Sistersの<Miracles>をAORにしたと言えば、このナイスな感覚が分かるかナ?)からラストの<Give It Up>まで息を付かせない程の高揚感が支配し、誘惑のメロディは聴き手の自意識を消滅させ、全曲が終了するまで正気に立ち返る事すら許さないのだ。実際音を耳にすれば、この表現がオーバーでない事が御理解頂けると思う。私の人生に於ける屈指の名盤と断言しよう。
『Family Ties』

  77年発表の2nd。これが噂のJay Graydonネタである。彼の活躍ぶりは相当なものなのでファンならば悶絶モノだが、Faragher Brothersにとっても脅威だったようで、彼らの音楽性にも微妙ながら影響を及ぼし、前作よりもAORの雛形的色彩が濃くなっている。恐らくJayはギタリストとしての参加のみならず、音楽アドバイザー的な役割を担っていたのではなかろうか?
<Thanks A Lot><Life Is Love>はサウンド的にもJay色が濃厚で、後年の彼のプロデュース作の断片が見え隠れしている。特に<Life〜>はダンサブルなビートに、Sugarbabe(勿論達郎の.....あのグループは米国にも影響を与えていたのか?)的なポップな解釈が加わり、超一級の完成度を誇るナンバーとなっている。
『Open Your Eyes』

  78年暮れの発表。メンバーも二人加わり、レコード会社もメジャーのポリグラムへと移籍し心機一転。彼らの新しい出発に賭ける意気込みがひしひしと伝わる名盤となった。楽曲も洗練を極めた粒ぞろいのものばかりで、アルバム全体の完成度も上昇(個人的には1stの次に位置する)。ここから<Stay The Night>が翌年Top50に入るスマッシュ・ヒットを記録し、一般的評価を獲得する事に成功している。個人的には美しいメロディを聴かせる<Baby When You Make It With Me>が大のフェイバリット。日本ではこの作品がデビュー盤となった。ちなみに91年にはCD化が実現しているが現在は入手困難。でも意外とネット・オークションあたりで安く見つかるかも。
 『The Faraghers』

名前をThe Faraghersと改め79年に発表した本作だが.....残念ながら独特のブラック・フィーリングは微塵も感じられず、見事な位に産業入りのハードな路線に変貌。曲によってはNew Wave直系のストレートなものまで存在する始末だ。79年も後半になれば徐々に時代の主流は、ディスコからAORに移行していたはずである。彼らが過去3作でアプローチしていた音楽性が認められる絶好の時代背景となったのに.....何故このような奇策をとってしまったのか?プロデュースも名作1st、3rdと同じVini Ponciaなのに.....。これは彼ら自身の意識改革の表れなのか?それともどっかのバカタレ(爆)が自らの勝手な理想の実現のために、着実に積み上げた彼らとプロデューサーの過去の実績に泥を塗り、全く新しいミュータントに仕立てようとしていたのか?.....
 結局この異常(?)な行為はせっかく掴んだ前作のファンまで離脱せざるを得なくなり、グループは解散となる。
 
その後はメンバーのTommy Faragherの名前がサントラの『Stayin' Alive』で確認されたが、全く話題に上る事は無かった。その後Robbie Nevil(<Cest'La Vie>のヒットで一部ファンの間では有名なヒト)と組んで活動を行っていたが、最近ではすっかり精彩を欠いてしまったようだ。80年代に1枚でも本来の音楽道を貫いたAOR作を発表すれば、今頃は絶大な評価の対象であっただろう。残念で仕方がない!。 

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