五線譜2
Recommend Tracks/AOR.Pops7

Brian Auger's Oblivion Express/『Happiness Heartaches』

 DJもしくはクラブ周辺の音楽を追っている人間ならば、説明不要の超有名人。このアルバムはワーナー移籍第1弾。そしてグループ名義としてはラスト作だ。『Closer To It』〜『Straight Ahead』〜『Reinforcements』と、アルバムを重ねる毎にファンキー&メロウ色を強めてきた彼だが、ここではその音楽性を推進したばかりでなく、曲によってはTrinity時代のJazz Rock路線に戻ったり、更にラテンの要素も大幅に導入し、サウンドの色彩をより豊かなモノにしたりと、非常にバラエティに富んだ音作りを魅せている。<Got To Be Born Again>は、Free Soulファンが好むノリ、メロディ、サウンド・メイキングを全て兼ね備えているミラクル・ナンバー。<Back Street Bible Class>は、彼にしてはストレートなファンク。タイトル・ソングに於けるメロウ感覚も聴き逃せない。尚リズム隊はLenny WhiteとClive Chaman(Jeff Beck Group)。
Brian Auger & Julie Tippetts/『Encore』

 90年代に入ってからFree Soulの流れで再評価。彼の残した作品の殆どがリイシューされ、圧倒的な支持を集めているが、ここでやっとWarner時代の権利もクリアされ始めた様だ。Julie Tippettsとは勿論、Julie Driscollの事。しかしTrinity時代の<Indian Rope Man>の様な、心臓破りのナンバーは、ここには微塵も存在しない。Brianのオルガンがゆったり流れる、正にミディアム・フロウな曲が大半を占める。その最もたる例が、『Free Soul Garden』にも収録された<Rope Ladder To The Moon>。同タイプの<Spirit>、<Future Pilot>、バラードの<No Time To Live>等、珠玉と呼ぶに相応しい名曲の数々に、我を忘れて陶酔するのみ。
Mark Williams/『same』

 初期Stevie Wonderを思わせる<Yesterday Was Just The Beginning Of My Life>が、『Free Soul Travel』にセレクトされた事により注目が集まった、ニュージーランド発AOR。入手した国内盤が76年4月か5月にリリースされているので、本国では75年暮れに発表されているものと思われる。さて他の曲については未知だったので、ここで少し振れる事にする。実は殆どカヴァー・アルバム状態で、収録曲の多くは現在も知られているものが多い。例えば<Gimme Little Sign>は、ソウル・シンガーのBrenton Woodsのヒット。<Celebration>は何とJon LordとTony Ashtonによるナンバー。<Love The One You're With>はStephen Stills他で有名な曲。<Disco Queen>はHot Chocolateの75年のスマッシュ・ヒット。<Sail On White Moon>はJohnny Bristolというよりは、Boz Scaggsの『Slow Dancer』収録曲として知られているナンバー。<Ain't No Sunshine>はBill Withersがオリジナルのソウル・クラシック。<Wailing Wall>はTodd Rundgrenオリジナルで、AORファンにはNick DeCaroの『Italian Grafitti』のヴァージョンが有名かな?。
 そう言えば冒頭の<Yesterday〜>は<青春の輝き>という邦題が付いていたので、ついついCarpentersを思い出してしまった。
Mark Williams/『Taking It All In Stride』

 こちらは77年の3rd(2nd『Sweet Trials』は内容にチト問題アリ...><)。指向性は<Yesterday〜>とはガラリと変わって、マリン度満点のシーサイド・サウンドが展開されている。Ned Doheny程完成されていないが、Jackie Lomax程クセが無く聴きやすい。<A House For Sale>はクラブ・ユースの典型的な2stepビートが炸裂している、ダンサブルなナンバー。<Why Can't We Be Lovers>は勿論、Lamont Dozierが生み出したソウル・クラシック。ここでもTom Snowの曲が取り上げられており、タイトル・ソングは1st、<Rock&Roll Widow>は2ndの収録曲だ。
Jorge Calderon/『City Music』

 萩原健太氏監修のガイド・ブック、『ブルー・アイド・ソウル』にも掲載された、知る人ぞ知る1枚。但しタイトルに偽りあり(爆)。内容はカントリー/フォーク等、アメリカン・ロックのルーツに深く根ざしたモノだ。この後Warren ZevonやJackson Browne、David Lindreyなどと交友関係を持つ事実がそれを物語っている。だがリズムは結構跳ねているので、今のクラブ感覚で捉えても何ら違和感は無い。<At The Beehive>では、Curtis Mayfieldを意識したファルセット・ヴォーカルを展開。曲調もファンキーなギターをふんだんに聴かせるソウルフルなものだ。<What You Wanna Hear>では、少しElton Johnへの意識が垣間見る事が出来る。<Dawning Song>が一番Free Soul的かな?
The Bob Crewe Generation/『Street Talk』

 Four Seasonsの仕掛け人として、ポップス・ファンにはかなり知名度の高いヒト。若い人には、あの<君の瞳に恋してる>の作者と言えば、通りが良いだろう。そんな彼が77年に出した作品。これがストリングスがタップリの、お洒落でイケてるシティ・ディスコ・アルバムなのだ。タイトル・ソングや<Menage A Trois>は、Van McCoy(<The Hustle>)やSilvetti(<Shangri-La>...もとい、<Spring Rain>で有名なヒト)を思わせる部分もチラリと感じさせる、洗練度最高のダンサブル・アタック。そして当HP名物(?)のミディアム・フロウは、<Welcome To My Life>と<Time For You And Me>の2曲。特に後者は、プレAORとしてもかなりの完成度を誇る、推薦のナンバーだ。
Climax Blues Band/『Shine On』

 69年に結成。当初はClimax Chicago Blues Bandを名乗っており、アメリカのグループ以上に(彼らはイギリス出身)ルーツに根ざした本格派ブルースを展開してきた。このHPならば大ヒット・バラード<I Love You>や、Greg Guidly作の<Gotta Have More Love>を含む、80年の『Flying The Flag』。もしくはファンク仕立ての<Couldn't Get It Right>の全米Top3ヒットを生み出した、76年の『Gold Plated』を取り上げるのが本筋というものだが、77年の本作もかなりの内容。ややハードなA面(これはこれで好きなのだが)とは打って変わって、B面は<Couldn't〜>路線のダンサブルな曲が立ち並ぶ。重めのリズムとギター・カッティングが一体となったアンサンブルが、最高にイケている<Whatcha Feel>や、これまたファンキーなサウンド・アタックに悶絶の<Like A Movie>。この2曲の出来が圧倒的だ。
Bill House/『Give Me A Break』

 私の知っている限りでは、2枚のアルバムの存在が確認されているヒト。こちらは74年の1st。時代が時代だけに、まだまだイナタい要素を多分に含んではいるものの、数曲では都会派センスを垣間見る事が出来る。オープニングの<You 're Better Than A Common Thief>は、フリーソウル的AORのはしりとも言えるナンバーで、跳ね気味のリズムが何とも小粋だ。どこかCarole King〜The Cityの作風を彷彿とさせる<The Damage Is Done>も、今の音楽シーンにマッチした曲。同傾向の<He's A Bad Man>なんかも推薦。
Pablo Cruise/『Worlds Away』

 彼らへの思い入れの強さで歳がバレるという(^^;;;)。それだけ70年代後半〜80年代前半にかけて一世を風靡したバンドだ。特に日本ではサーフ・ロックの代表バンドとして、大いにその存在をアピールしたものだ。当該作は通算4枚目にして最大のヒット作。このアルバムだと反射的に<Love Will Find A Way>が浮かんでくるが、ここで推したいのは<Don't Want To Live Without It>。前作『A Place In The Sun』からの初ヒット、<Whatcha Gonna Do>の亜流を組むファンク仕立ての逸品。ブルー・アイド・ソウルとして聴いても何ら違和感はない。<I Go To Rio>はPeter Allenの『Taught By Experts』に収められていたナンバーのカヴァー。こちらはオリジナルよりもビートを強め、明るさを強調する事により強力なキラー・トラックとなった。勿論クラブ・プレイにも推薦。
Flow/『same』

 EaglesのDon Felderが在籍していたという事で、一部ファンには知られているレア盤。しかし実際はその手の音は1曲目と4曲目位で、あとはインプロヴィゼイションをふんだんに盛り込んだ、Jazzyでファンキーなサウンドが展開されている。あのFull MoonやGypsy的な雰囲気も随所に感じられるが、レーベルがCTI(Fusionの生みの親的存在かな?)なので、もう少しJazz Rock路線が徹底している。<Summer's Gone>は、White Elephantもしくは初期Chicagoを思わせる、くすんだトーンに心惹かれる。<No Lack Of Room>なんかは、もう少しブルース/カントリーの要素を強めれば、Allman Brothers Bandに近いかも。推薦曲は<Mr.Invisible>。アルバム中最もキャッチーな、クラブ向けの音である。



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