五線譜2
Recommend Tracks/AOR.Pops5

Jolis And Simone/(Same)

 一般的な知名度は無名ながら、好事者の間では隠れた名盤として語り継がれた1枚である。男性二人と言うことで想像されるのは、あのNielsen&Pearson。確かにハードな曲も存在するが、基本はブルーアイド・ソウルなので、Pagesとの比較が適しているのでは?。ベスト・カットはミディアム・フロウの<Midnight Lady>。ここで展開される世界は、Pagesの<Let Go>と全く同一のモノである。何とあのRay Goodman & Brownも、81年の『Stay』で取り上げている。そして同曲をもう少しクリスタルに仕立てた、<Roundabout Midnight>の雰囲気も極上だ。しっとりバラードの<Just A Little Love>や、メリハリの利いたアレンジがドラマティックな<Night Flight>(Niteflyte???爆)も素晴らしい。ちなみにプロデュースは、Barry Manilowの全盛期の影の立役者として、そして自らも『Street Angel』という傑作を持つRon Danteが担当している。
Tierra/『City Nights』

 Santanaを筆頭にMalo、Azteca等のラテン・ロックの要素に、スウィートなソウル/R&B(昔の方)感覚を溶け込ませた音楽性が実に素晴らしいグループ。アルバムは5枚確認されているが(他にも数枚あるらしい...)、このアルバムは80年リリースの3枚目。<Together>はポップ/ソウル・チャートでブレイクを果たした、メロディが最高に美しいバラード。<Memories>は当時ディスコを席巻(でもないか...?)したラテン・ディスコ(ちなみにメドレーで繋がる次の曲のタイトルは<Latin Disco>...)。哀愁バラードの<Gonna Find Her>も良い。そして白眉はサウダージ感覚に満ち溢れながらも、見事な疾走感を魅せる<Givin Up On Love>。今のクラブ/ラウンジ・シーンに焦点を合わせると、この曲が最もジャスト・フィットなのでは?
 巷の評価はそれ程高くないが、5桁付いているLight Mellow系のレア盤、人気盤と比較しても何ら遜色はない程の出来映えだ。アルバム・トータルで推薦。
 ちなみにこれはインディーでリリースされていたものを、Boardwalkが買い取ったモノ。従ってジャケの異なる同じアルバムが存在する。
Paul Anka/『The Best Of The United Artist Years 1973〜1977』

 83年の名盤『Walk A Fine Line』からは、すっかりAOR的な観点で注目されるようになった彼の、70年代中期〜後期のベスト。これだけなら別に取り上げる必要はないのだが、当時アルバム未収録だった<Make It Up To Me In Love>の出来が問答無用に素晴らしく、ここでレビューさせて頂いた次第。フリーソウラー悶絶のギター・カッティングと、Silver Convention的なアレンジを随所に織り込ませ、最高のメロディとヴォーカルをダンサブル&ハートフルに展開させた逸品だ。デュエットしているOdia Coatesは、全米No1ヒットの<Having My Baby>でもパートナーとして歌声を聴かせているが、最近ではクラブ・クラシックとなった<I'll Kept On Loving You>の方が有名であろう。
 ちなみに日本でしかリリースされなかった<Everything Is Super Now>(当時本人出演のCFで使用)も何故か収録。
Blood Sweat & Tears/『New Blood』

 ブラス・ロックのはしりと言われるグループ(Chicagoの先輩的立場)。グラミーを獲得した69年の『Blood Sweat & Tears』が代表作となるのが世の常。このアルバムはどちらかと言えば駄作の部類に入っており、当時から評価は芳わしくない。しかし単独で曲を取り出すとなかなかの逸品も多く、Carole KingのThe Cityがオリジナルで、Roger Nichols & The Small Circle Of Friendsのカヴァーで有名な<Snow Queen>〜<Maiden Voyage>(処女航海)のメドレーは、本気で聴き惚れてしまう程の出来映えだ。もう一つ聴き逃せないのが、<I Can't Move No Mountains>。Margie Josephのヴァージョンが『Free Soul Voice』に収録されたアノ曲である。こちらはコーラス&ハーモニーを駆使し、Tower Of Powerを彷彿とさせる圧倒的なヴァージョンに仕立て直している。
 フリーソウラーは74年の『Mirror Image』収録の<Tell Me That I'm Wrong>で昇天すべし。
Bellamy Brothers/『Plain & Fancy』

 76年に<Let's Your Love Flow>(愛はそよ風)の全米No1ヒットを放ったカントリー系の兄弟デュオ。このアルバムは77年の2nd。収録曲は初期Eaglesを思わせるカントリー・テイストの楽曲が殆どだが、一曲外せないのが、当時日本の一部ヒット・チャートでも評判を呼んだ<Crossfire>。ビートはディスコなのだが、そこに透明感溢れるメロディと爽やか系のアコースティック感覚を存分に加味し、Late70'sの鮮やかな雰囲気を極限までに表現した逸品だ。Fifth Avenue BandやPeter Gallway、Americaの<Ventura Highway>等がお好きな方なら、是非ともチェックして頂きたい。
Pete Townshend/『Empty Glass』

 ロック界屈指の大物。The Whoのギタリストとして人気も実力も最大級に位置する彼が、80年に出した1stソロ。グループの亜流を組むストレートなロックが大半を占めるが、意外な程にダンサブルかつメロウなナンバーも数曲。その筆頭である<And I Moved>は、幻想的なイントロから始まる都会感覚に満ち溢れたお洒落な逸品。とても彼が演じているとは信じがたい程だ(謝)。当時全米でTop10にランクされた<Let My Love Open The Door>では、あのHall & Oatesと双璧を成す程の、スカッとしたポップ感覚が味わえる。
 85年の『White City A−Novel』収録の<Face The Face>も、DJに認知されればフロア大爆発曲となる事は間違いない所。
R.O.A.R./『same』

 グループ名は聞き慣れないが、実は何とSantana(当時のメンバー)の別働隊。<Hold On>のヒットを生んだ82年の『Shango』で提示したポップ路線を、過激なまでに突き進んだSantana名義の『 Beyond Appearances 』が、古くからのファンから避難の総攻撃状態。その後にCarlosと何があったのかは分からないが、彼抜きで85年にTabuよりリリースされたのが本作。中心となっているのは元Tower Of Powerのメンバーで、当時Santanaに於いて重要な地位を占めていたChester Thompson。ドラム他多くの部分で打ち込みが多用されているので、サウンドがやや無機質に聞こえるのは否めないが、サビのメロディが耳に残る<Can't You Feel It>や、唯一のメロウ・ナンバーである<Look What's Showin' Through>等々佳曲も多い。
Cliff Richard/『I'm Nearly Famous』

 英国が世界に誇る永遠の貴公子。2000年で目出度く還暦をお迎えになったが、その若々しさには驚嘆するばかり。79年の<We Don't Talk Anymore>あたりは、クリスタル世代にも良く知られている名曲だ。このアルバムは76年作。そして本格的に米国進出を狙った作品でもある。今聴くと70年代中半のポップスの域を抜け出ない曲ばかりだが、1曲だけ今の音楽シーンにジャスト・フィットする曲が存在する。その<Devil Woman>は当時イギリス、アメリカは勿論の事、日本でも一部ヒット・チャートで大ヒットを記録したナンバー。妖艶な魅力を存分に漂わせるサウンド・メイキングは、是非若いライト・メロウ世代に体験して頂きたい。あと<Miss You Nights>もスマッシュ・ヒットとなったバラードで、Art Garfunkel等様々なカヴァーが存在する。
Daniel Sahuleka/『Sunbeam』

 『AOR Light Mellow』 からは外されてしまったが、一時期Robben FordやRick Bowles、Mark Winkler等の真の名盤群と一緒にCD化が実現するなど、もっともっと注目を集めて然りの一枚だ。声にクセがあるので評価が分かれてしまうのが大きな難点だが、全編通して伝わってくるトロピカルな雰囲気は、季節を問わず部屋に暖かい風を運んでくれる。<Ev'rybody Feel The Groove>は81年当時、ダンス・クラシックとしてその名を轟かせたナンバー。同曲をもう少しブラコンに近づけた<Lorraine>(個人的ベストカット)、どこかあの<Casablanca>を彷彿とさせるメロディ展開を魅せる<The Rain>、常夏の島の夕暮れのシルエットが脳裏に浮かぶ<Tears For The Stars><Jakarta>あたりの出来は極上だ。ちなみにこのアルバムはレコード、CD、輸入盤レコードと全てジャケが異なり(写真は国内盤レコード)曲順も違う。
Geoff Muldaur/『Motion』

 某雑誌の特集で書かれてしまった「駄作」の文字。彼自身もお気に召していないとの事だが、ここのサイトの音楽性で語るのであれば、その文字は似合わない。むしろ取り上げるには渋すぎる位だ。Salsoul Orchestraが演りそうなディスコ調の<Hooray For Hollywood>はかなり意外&ビックリモノだが、勿論聴き所は他のナンバー。ゆったりとした<When You Touch Me This Way>は、アルバム中ベスト・カット。Cory Wellsがあの傑作アルバムの1曲として取り上げた事でも有名(?)だ。2ステップに渋さを同居させた<Let It Out>も良い出来だ。<Southern Nights>は勿論<哀愁の南>(爆)の事。こちらの方がオリジナルのAllen Toussaintに近いかも。Rod Stewartで有名な<I Don't Want To Talk About It>や、Barry Manilowも歌っていた<Why Don't We Live Together>等のカヴァーも収録されている。洒落たサウンド・メイキングの仕掛け人はJay GraydonとDavid Fosterのお二方。でもエアプレイを期待したら×です。

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