五線譜2
Recommend Tracks/AOR.Pops3

Elkie Brooks/『Shooting Star』

 70年代中半〜後半に数枚のアルバムを発表した、ソウルフルなシンガー・ソング・ライター。これは何枚目なのかは分からないが、78年にリリースされたもの。半数以上はカヴァーを含め、他人の作品で占められている。<As>は勿論Stevie Wonderのあの曲。最初はバラードなのだが、曲が進むにつれて、いきなりファンクに早変わり。そのグルーヴ感は原曲を遙かに超越した、想像を絶するものだ。Ned Dohenyの『Prone』に収録されていた珠玉のミディアム、<Learn To Love>(Nedの方では、<Think Like A Lover>というタイトルだった)の説得力ある解釈も、聴き手の細胞に着実に届く。
Peter Cupples/『Fear Of Thunder』

 オーストラリアが生んだ名Free Soulバンド、StylusでリードVO&ソングライターとして活躍していたPeterが、グループ解散後に発表したソロ第1弾。アルバムに年代の記載がないので分からないが、恐らく80〜82年の間だと推測される(2ndが84年なので)。残念ながら全体のクォリティは、グループ時代と比較することは無意味に等しい程のモノだ。しかし物凄い名曲が1曲存在する。その曲<Sweet Summer Nights>は、Marty Balinの大ヒット<Hearts>に、フォーキー&トロピカルな要素を加えた様な、日本人好みのサウンド・メイキングに悶絶だ。もう一つ、しっとりと歌われるバラードの<You Never Know>の説得力もお聴き逃しなく。
Cate Bros/『same』

 『AOR Light Mellow』では、2ndの『In One Eye And Out The Other』が掲載されていたCate Bros。しかしFree Soul度としては、こちらの方が気分である。一時期The BandのLevon Helmと関わりを持っていたことが要因なのかは分からないが、そのサウンドはどこかThe Bandに通ずるアーシーな雰囲気を感じさせ、そして時にはLittle Featの様なうねりとメロディ展開を聴かせる(こちらの方がもう少し都会的か?)。当時ヒットした<Union Man>は、かなり強烈なグルーヴを持ったファンク。今のクラブ・ブームで再評価されて然るべきカラーも随所に。同曲を少しソリッド&コンテンポラリーにした<I Just Wanna Sing>も必聴だ。ちなみにあのDavid Fosterが6曲に参加。Airplayとは全く別物だが、数曲で聴かれるプレイに、ごく僅かながら今後の姿を垣間見る事が出来る。
Rita Coolidge/『Love Me Again』

 70年代後半〜80年代前半に破竹の勢いの活躍ぶりを魅せ、現在でもコンスタントにアルバムを出し続けているヒト。ここ数年は本国よりも日本での人気が定着している感もある。この作品は78年リリース。当時ヒットした<You>は、作者Tom Snowが1stで自演している他、68年に<Angel Of The Morning>(Juice Newtonのカヴァーでも有名)をヒットさせている、Merilee Rushの77年作でもやっているが、リズムを前面に押し出し、都会的なアレンジを施したこちらの方が出来は上。クラブ・ユースにも適しているので、DJにも推薦(最近ではMarcia Hinesのカヴァーも頻繁にプレイされている)。他にはタイトル・ソングのしっとりとした雰囲気と、透明感溢れるヴォーカルも大きな聴き所。<Slow Dancer>は勿論、Boz Scaggsの名唱で知られるあの曲だ。
Lisa Dal Bello/『same』

 Jaye P Morgan程ではないにしろ、これも初期David Fosterプロデュースの逸品。どこかMarilyn Scottの<Let's Be Friends>を彷彿させるダンサブルな<My Man's Made Up>は、Free Soulとしての人気が浸透すれば、フロア爆発の起爆剤になる要素は十分。<Day Dream><Milk & Honey>のファンキー感覚は、今のFosterでは恐らく出す事は出来ないであろう。バラードはAirplay路線研究中と言った感じだが、77年という年を考えれば仕方が無い所(でもJaye P は76年であの完成度。よく分からん...?)。
 この後発表した『Pretty Girl』は、更なる充実を極めた楽曲と、TOTOのメンバーのアグレッシブなプレイをふんだんに盛り込んだ作品で、こちらの方を名盤に挙げる人間が多い。但しMellow Groove的な要素は薄い。

Jackie Lomax/『Did You Ever Have That Feeling?』

 デビューはBeatles、Badfinger等で有名な、あのアップルから。その後ワーナーでも2枚出し76年にキャピトルへ。移籍第1弾の『Livin'For Lovin'』は『Suburban』にも掲載され、Free Soulの仲間入り。でも個人的には77年のこちら(ラスト作?)の方が好みだ。Soulへの憧憬は前作以上にストレート。<Soul Light>はギターのカッティングと、ホーン・セクションを交えたファンキー路線。もう少しビートを落とし、メロウに仕上げた<Fine Lines>も良い。<Part Of My Life>と<Room To Move>の2曲は、アルバム最大の聴き所。前者は哀愁感漂うメロディに、跳ね系のリズムを絡ませた心地よさ満載のナンバー。後者はディスコ的な要素を少し取り入れ、フルートとキーボードを駆使しマリン度を最高潮にまで高めている。
The Bendeth Band/『same』

 どことなくN.Y.の夜の雰囲気を感じさせる音を、濃密に聴かせる白黒混成のバンド。81年に出た当該作は、コンテンポラリー指数が盛り沢山の逸品だ。飛び抜けていい曲は無いものの、収録曲はどれも平均点を余裕でクリア。アルバム全体としても非常に完成度が高い。<I Was There>は、いかにもの80年代初頭の、お洒落でダンサブルなサウンドの典型的スタイルが貫かれた秀曲。同タイプの<Love Collest>や<Feel The Real>もGood!。バラードの<A Colourful Dream>の出来も素晴らしい。Shakatak、Niteflyteあたりのファンならば、絶対に聴いて欲しい推薦盤デス。
Bobby Goldsboro/『Summer(The First Time)』

 名バラード<Honey>の大ヒットが有名だが、この人自体にスポットが当たる事は、殆ど皆無と言っても良いだろう。結構ヒット曲を持っているのだが、一般の評価はいわゆる一発屋。厳密に言うと二発屋かな?。73年にヒットを記録したタイトル・ソングは、私の生涯屈指と断言できる圧倒的な名曲だ。ストリングスの使い方がBarry Whiteしていて実にソウルフル。曲半ばのドラマティックな盛り上がりは、何度耳にしても鳥肌が立つ。<Brand New Kind Of Love>も、どこかニュー・ソウル的な手触りを感じさせる逸品だ。あと<Killing Me Softly With His Song>(やさしく歌って)なんか取り上げている。他の曲は普通のポピュラー・ソングなので、無視しても構わないだろう。
Night/『same』

 Manfred Mann's Earth Band等で活躍していたChris Thompsonが79年に結成したバンド。メンバーには故Nicky Hopkinsやセッション・ドラマーのRick Marotta、後にPretendersやPaul McCartneyのサポートでクローズ・アップされる、Robbie McIntoshの名もある。<Hot Summer Nights>は当時、Glayの如くヒットしていた(爆)名曲。日本では翌年にタイアップが絡んだ事もあって、2度ヒットしている。Lydia Pence(Cold Blood)を思わせるStevie Langeのヴォーカルが、濃密な雰囲気を演出する<If You Gotta Make A Fool Of Somebody>や、モータウン・クラシックをDoobieBros風に解釈した<Ain't That Peculiar>あたりの出来が良い。ちなみにこのアルバムにはChrisがソロ名義で出した<If You Remember Me>(映画『Champ』のメインテーマ)が追加収録された2ndプレス盤があり、そちらは相当にレアである。
Leon And Marie Russell/『Wedding Album』

 スワンプの巨匠。また<A Song For You>や<This Masquerade>(共にCarpentersで有名)等の生みの親としても知られている。その彼が妻のMaryと組んで発表したのが当該作。元々MOR的な感覚も持ち合わせていたので、そんな彼のソフト・サイドにスポットを当てたアルバムとも言えよう。要注目はやはり<Rainbow In Your Eyes>。Al JarreauやDoug Perkinson、Judy Roberts等のヴァージョンがFree Soulとしても有名だが、このオリジナルも勿論魅力的だ。またBobby Womackの<Daylight>を取り上げており、プロデュースも何とBobby!原曲に負けず劣らずのソウル濃度満点の作りで、聴く度に胸が熱くなる。

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